さよならロザリー。平和が訪れた後の世界でデスピサロが選択した行動。
「準備はもう終わった？」
「ああ。」
「本当に行ってしまうのね？」
「ああ。」
俺の口から出た言葉はそれだけ。
それしか言えなかった。
はじめに
はじめにこの記事について簡単に紹介です。
これはドラクエ４裏の主人公であるデスピサロと、恋人のロザリーのその後を描いた創作物です。
それからリメイク版を元にしているので、
なぜロザリーが生きているんだ！
死んだはずだろ！
というファミコン版しかプレイしていない方は、この記事を読んだ後にこちら（第6章まとめ）でお勉強してください。
真実８割、ジョーク２割で徒然と書いております。
平和になった世界
遡ること一週間前。
俺は人間の勇者達と共に旅をしていた。
魔王のくせに人間と仲良くしていたのかって？
それは違う、仲間になったわけではない。
あくまで共闘である。
そこだけは勘違いしないでほしい。
あいつらと一緒に旅を始めて気づいたことがある。
どうやら俺は人間について少し誤解をしていたらしい。
あいつらは人間のくせになかなか強い。
それに話してみると意外と良い奴らでもあった。
今ならロザリーが言っていたことも少しだが頷ける。
人間だとか魔物とか、そんなことは関係なかったのだ。
魔物も人間も良いやつも悪いやつもいる。
ただそれだけのことだった。
あいつらともだいぶ打ち解けた頃、ついに俺たちは真の黒幕の正体と居場所を突き止める。
そして俺たちは憎きエビルプリーストを倒したのだ。
これでロザリーへの危険は去った。
一時ではあるが、平和な世界を勝ち取ったのだ。
懐かしのロザリーヒル
「ピサロ様万歳！」
「おかえりなさいロザリー様！」
目的を果たしてロザリーヒルに戻ると、かつて一緒に住んでいた仲間たちが盛大に出迎える。
中には鼻水を垂らしながら涙を流すイエティや、俺の周りをぴょんぴょん飛び跳ねて歓喜するスライムもいる。
全く、大げさなやつらだ。
そして実感する。
ああ、やはりここは居心地が良い。
デスパレスとは大違いだ。
あそこは蹴落とし合い、騙し合いが日常的で温かみがない。
今となっては何故あんな所にいたのか、自分でも理由が分からない。
家に着くとロザリーが言った。
「ピサロ様、これからは安心して一緒に暮らせますね。」
「そうだな。」
俺ははぐらかすように、視線を外して小さな声でボソッと呟いた。
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決心
ロザリーヒルにて数日が過ぎた頃。
ふとあいつらのことを思い出す。
ここに再び帰ってこられたのは、勿論あいつらのおかげ。
口に出して感謝こそしなかったものの、少なからずありがたいとは思っている。
照れくさいから一生伝えることはないのだが。
やはり人間全てが悪いわけではない。
それはこれまでの旅で十分理解した。
だったら俺にできることは？
助けてもらった恩返しもしていないし、特に勇者には随分悪いことをしてしまった。
いくら俺でも勇者の恋人を生き返らせてやることはできないが、少しでも罪滅ぼしがしたい。
そう考えていたのだ。
デスパレスへ再び
「準備はもう終わった？」
「ああ。」
「本当に行ってしまうのね？」
「ああ。」
「いつ帰ってくるの？」
「分からない。」
俺はロザリーを置いて旅に出ることにした。
目的地はデスパレス。
もう一度あそこに行って、俺が絶対的魔王として君臨するのだ。
この世界をより良い世界にするため。
平和で皆が笑顔で過ごせる世界を作るため。
それが今の俺の夢であり使命だ。
しかし、そのためには人間と魔物がもっと分かり合わなければならない。
それにいつ達成できるかも、実現できるかも分からない。
魔物に家族を殺された人間や、逆に人間に家族を殺された魔物もいる。
そいつらはきっと面白く思わないだろう。
それに他にも反対する集団が出てくるはず。
生物間のいざこざを解決するには、きっと長い年月が必要となる。
もしかしたら次にロザリーに会うのは１０年後・・・。
いや、２０年、３０年後になるかもしれない。
人間側の統率はあいつらが何とかしてくれるだろう。
だから俺は魔王として、魔物側の統率を図る必要があるのだ。
そして争いや憎しみのない平和な世界を実現させる。
俺はロザリーの顔を見ないように俯き、足早に出発する。
いつかまた会おう。
俺は誰もいない草原で一人そう呟いた。
完
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