恋するアリーナの後悔 大好きだったクリフトとの実らない恋の結末

再会

「随分久しぶりねクリフト!元気してた~?」

そう言って、アタシは以前一緒に旅をしていたクリフトに声を掛ける。

 

「お久しぶりです、姫。」

クリフトは低い声でそう答えると、その場を離れようとする。

随分と蛋白になったものだ。

前はあんなにアタシのことを慕ってくれていたはずなのに。

 

 

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「ちょっと~、久しぶりに合ったのに、どうしてそんなに冷たいのよ?」

クリフトとは旅が終わってから合う機会も減り、距離が離れてしまった。

それほど時間が経っている訳でもないのに、以前のようなやりとりができない。

何故かギクシャクしてしまう。

 

「あ、そういえばアタシ、結婚することになったの!」

「もちろん結婚式に来てくれるわよね?アタシの晴れ舞台よ!」

「申し訳ございません。その日はちょっと。」

クリフトはそう言って足早に去っていった。

 

「ちょっとくらい反応してくれても良いじゃない。」

誰もいなくなった路地でアリーナはそう呟いた。

アタシの結婚には興味がないのであろうか。

クリフトが何を考えているのか分からないが、少しくらいは動揺してほしかった。

 

 

アリーナの心境

アリーナは結婚することになった。

相手はどこの国の人だったか。

とにかく良い家柄なのは覚えている。

それ以外はよく知らないし興味もない。

いわゆる政治結婚というものだ。

 

しかし、アリーナはクリフトに止めて欲しかった。

自分と結婚したいと言って欲しかった。

また脱走してでも、この人となら一緒に歩みたいとさえ思っていた。

しかしもう遅い。

当のクリフトが逃げてしまったのだから。

 

 

「良いんですかな?」

「あら、盗み聞きかしら?」

「ほっほっほ。たまたま散歩していたら聞こえてきただけですぞ。」

話の盗み聞きをしていたブライが茂みから身を表す。

二人のことを案じているのであろう。

 

「ほっといてよ。ブライには関係ないでしょ。」

アリーナはブライに背を向けると、トボトボと城へ帰って行った。

 

 

もちろんアリーナは奥手ではない。

告白しようと思えばいつでもできた。

しかしそれをしなかったのには訳がある。

 

王家と一般市民が結婚するとなれば、当然反対派が動くであろう。

批判や中傷、下手をしたら暴動だって起こるかもしれない。

それだけではない。

仮に反対を押し切って結婚したとしよう。

そうすればクリフトは、王族の仕来りに縛られることになる。

今まで必要なかった、王族としての教養や品格を植え付けられることになる。

一日中、民のために身を粉にして働かなければいけなくなる。

そんなつまらないことにクリフトを巻き込みたくなかった。

クリフトには変わらずにいてほしかった。

 

反面、それでもクリフトと一緒になりたいと思っている自分もいる。

姫なんて立場を投げ捨てて、どこかへ逃げたいとも思った。

しかし、それでは民へもクリフトへも迷惑が掛かってしまう。

アリーナの心境は複雑だった。

 

帰宅

アリーナが家に着くと、結婚式の準備で城中が大忙しであった。

そんなに真面目に取り組まなくても良いのに。

 

「姫、式で着られるドレスはどれに致しましょうか?」

城に仕えているメイド達が、どこからか大量のドレスを持ってきてそう尋ねてくる。

どうやら当の本人よりもよっぽど張り切っているようだ。

 

「どれでも良いわよ。そんなもの。」

「またまたご冗談を。一生に一度しか着れないドレスですよ?」

本当にどうでも良かった。

今はそんな気分ではない。

ましてや好きでもない男と結婚するというのに、どうしてお洒落などする必要があろうか。

 

「お相手のお方、随分と良いお家柄の人みたいですね。そんなお方と結婚できるなんて、さすが姫です。」

そんなこともどうでも良い。

お金とか、権力とか。

世界中旅をしてきたとき、お金がなくても楽しく過ごしている人はたくさんいた。

そして自由に生活している人達が幸せそうだった。

それに自分自身、身分を隠してお金の少ない旅をしてきたが、心の底から楽しかった。

 

「このドレスなんて似合いそうですね。姫も随分と綺麗な大人の女性になられましたし。」

そういえば、昔はおてんばだとか自由奔放だとか言われていた。

しかし、それも昔のこと。

今は大人になってしまったのだ。

自分の好きなことだけをして自由にしているつもりはない。

時がくれば今回のように結婚だってするし、王家して民のために尽くす。

一人娘だから自分でやらなければいけないのも十分理解している。

そして今まで散々心配を掛けてきた分、立派な姫として皆を安心させたいとも思っている。

 

しかし、本当にこれで良いのであろうか。

他になにか道はないのであろうか。

せめて結婚相手が決まる前に告白出来ていれば違っていたのかもしれない。

 

 

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伝えたい気持ち

クリフトと再会してから数日が経った。

何もかも自暴自棄になっていたころ、風の噂でクリフトが旅に出たと知る。

ついにもう合うこともできないのか。

 

ありがとう。

ごめんなさい。

さようなら。

好きでした。

伝えたいことは山ほどあった。

ありすぎて自分でも分からないほどたくさん。

しかし、それももうできない。

 

なぜあのときに伝えられなかったのだろう。

どうしてこうなってしまったのだろう。

いくら自問自答しても答えが出ない。

どうして良いのかも分からない。

後悔だけが残る。

 

 

クリフトの気持ち

コンコン。

部屋のドアをノックする音が聞こえたかと思うと、ブライに話しかけられる。

「姫、クリフトのことは聞いておりますな?」

「ええ。」

「それでは理由はご存知ですかな?」

「知らないわ。」

「これはわしの推測ですが・・・」

ブライはゆっくりと語り出した。

 

 

ブライは一通り話し終えると部屋を後にした。

一人で考えたいのを察してのことであろう。

クリフトがアタシのことを好いていたこと。

告白できなかったことを後悔していたこと。

アタシに憧れや尊敬の気持ちがあったこと。

アタシが心も強いと勘違いしていたこと。

クリフトも苦しんでいたこと。

アタシと合わせる顔もないと思っていたこと。

成長して対等な立場になるまで鍛え直したいと考えて旅に出たこと。

 

ブライのおかげで他にも色々と分かった。

あれほど仲が良かったのに、アタシはクリフトのことを何一つ理解していなかったのだと今更ながらに気付いた。

 

 

アタシは強い人間だとか言われているが、そんなことはない。

一人の弱い人間だ。

むしろクリフトの方が強いとさえ思う。

 

しかし、周りが強いと思ってくれているのなら。

目標にしてくれるというのなら。

アタシはそれに値する人間になろう。

クリフトにだって負けてられない。

アタシの方が成長してやる。

そう心に誓った。

 

 

決心

さっきまでモヤモヤしていた感情は、気づけば大分楽になっていた。

これなら明日からまた頑張れそうだ。

さすがはブライ。

アタシが一番信頼している部下だけはある。

どうやらアタシのこともクリフトのことも、全てお見通しだったようだ。

 

 

「ブライ、ありがとね。」

「クリフト、またね。」

 

アリーナは誰もいない部屋の中で一人呟いた。

 

 

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